6月2日(日)石川県社保協第29回定期総会の第二部は、京都橘大学教授の岡田知弘さんによる「住民本位の復旧・復興を実現するために」というテーマの記念講演を開催しました。まさに時宜にかなう内容で、多くの学びを得ました。
これまで全国様々な災害現場の調査活動に取り組んでこられた岡田さん。冒頭に述べられた「運動と声を挙げないと人権を守られない」という言葉がとても説得力をもって響きました。災害時には基礎自治体がどれだけ住民の情報を把握できているかがカギであり、そのことが今回石川県での初動の遅れ、進まない復旧にも現れているとのことです。
100年前、関東大震災のときにも道路や建物は手段であり、住宅や生業、ケアがあって初めて「人間の復興」と呼べるという理念を掲げた学者がいた。そして、福島県浪江町の馬場町長は、憲法をまちづくりの基本に据えることを徹底していた。そのような復興理念の運動に学ぶ必要があります。
今は大災害の時代、自然史の視点からはおよそ1000年前の日本列島が活動期に入った時期と重なるため、今後も大きな地震が起きることも十分に予測される。(その翌朝、珠洲市を震源とす震度5強の地震が起きました)いつ起きてもおかしくないよう、いかに被害を最小にするかが災害対策で、企業でも計画作成が義務付けされるようになってきているが、国には災害を統括する部署がないため、これまでの経験が継承されていかないと言う。むしろ財務省などが、これまでできなかったことを危機に乗じてやろうとすることに十分注意が必要だと。
災害は自然環境や建物、社会関係などを一挙に破壊し、その再生産、再投資を各地域レベルで遮断してしまう。地域ごとに違う対応が必要で、まさに被災地から被災者がしっかり声を発していくこと、産業復興と生活復興の「併進」が大事とのこと。私たちは普段から地元の小売店やスーパーなどを守っていく必要がある。大規模店はすぐにシャッターを閉めてしばらく開店しないが、小さな店が踏ん張って店を開けてくれたおかげで多くの町民が助かった事例もあるそうだ。
はたして石川県の「創造的復興プラン案」が示された。県の復興本部会議のメンバーは総勢26名、うち15名が中央省庁直轄のトップとのこと。これでは当然国の声が強くなる。まさに今国会で問題となっている「地方自治法改正」の先取りではないかとの指摘があった。プランにある「県の成長戦略に基づく」との文言も気になる。何より2月に馳知事が「創造的復興」を初めて掲げた際に放った言葉「必ず能登に戻す!」に仰天したそうだ。何と上から目線。被災者を2次避難で分散させ、仮設住宅も遅れ遅れで、その質も問題に、具体的な復興計画どころか、がれきや倒壊家屋の撤去も一向に進まない現実は、これまでの経験が生かされているとは言えない。
被災地の住民と地方議員が連携して、声を集めて、憲法を生かしたまちづくりこそ、今必要なこと。被災者主権、地域住民主権を発揮すること、これから市町でも復興計画が作られ始めるので、ぜひ参加し、意見を言う、ものを言う市民にという力強いメッセージをいただいた講演でした。
岡田知弘さんの資料はこちらからダウンロードできます
当日の講演映像はこちらから視聴可能です
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